Ｔ．Ｓ．

　言友会に入会して、もう４年になる。

　人前で話すのが苦手なので、人並みに話せるようになればと思い参加するようになった。スピーチをするのが怖くて、公民館の玄関前で帰ったこともある。

　しかし、今では例会の司会を務めるまでになった。例会では、スピーチや発声練習以外に朗読をすることがある。私は朗読をするたびに、あのときのことを思い出す。

　小学２年生の授業参観のときだ。

　授業は、みんなの前に出て童話を読むというものだった。前日、どんな物語を読むかを考え、あまり長くない短編のものを探し出した。

　読む順番は出席番号で、私は７番目だった。クラスメイトが大勢の前で、姿勢を正しくし、大きな声で物語を読み上げていった。

　私の後ろでは、小さな声で練習する人もいた。私には、とても練習をするような余裕はなかった。

　ついに私の番がきた。膝が震えていたと思う。それでも、みんなの前に出て、背筋を伸ばし胸を張った。「さあ、大きな声を出して読まなければ！」と心の中でつぶやいた。

　だが、恥ずかしさと緊張のあまり声を出せなかった。水を打ったような静けさ。自分の心臓の音が、みんなに聞こえているのではないかと思うほどだ。チラッと前を見たら、先生と母は苦笑いをしていた。

　結局、１行も読めなかった。目に涙を浮かべ、うつむいたまま席へ戻った。席が、とても遠かった。

　この体験が尾を引いているのか、いまだにスピーチなどで緊張してしまう。

　言友会と出会って、もう４年。私は、少しだが自信がついたと思う。この思い出は、まだ辛い記憶として残っているが、いつかこれが、いい思い出の一つとなる日が来るのを祈って、時間があれば積極的に例会に参加していこう。

---